※本記事は、本協会の会報「マレーシア」Vol.55(2024年8月31日発行)に掲載されたものです。
本協会は令和三年三月末より、外務省が政府開発援助(ODA)資金をODA政策の内容に沿う経済社会開発事業に対して供与する「日本NGO連携無償資金協力」(以下、N連)を活用して、「サラワク州先住民居住地域における水環境整備による生活改善事業」を行って参りました。そして、当該N連事業による水環境改善によって得られた生活余力により、村の女性を中心に果樹・野菜の栽培や伝統菓子等の製造を行うことができるようになったため、水環境改善に伴う生活向上プログラムの一環として村の産物を販売する「道の駅」を村落近くの国道沿いに整備しました。
当該N連の第一期事業は令和六年三月末に終了しましたが、事業期間後の令和六年四月二十七日(土)にN連第一期事業の集大成として「道の駅」の開所式を開催しました。本協会からは、小川孝一理事長、西田重信監事、森林高志理事、小泉文明理事、諸見里光参与、小菅雄磨理事補が出席をしましたので、現場からのレポートをご紹介します。
はじめに
日本マレーシア協会の小菅です。外務省のN連事業における生活向上プログラムの一環として、サラワク州サマラハン管区スリアン地区の国道沿い州有地に「道の駅」(村の産物販売用施設・公衆トイレ併設、三六七・八㎡)を整備いたしました。
そして、この度の「道の駅」の整備について、N連を通じた「日本政府の支援」と「日本のNGO団体の協力」によって実施した事業成果であることを国家間においても広く広報し、実際に「道の駅」を維持・管理・運営・活用する地域社会への告知を行うため、大々的に「道の駅」の開所式を開催いたしました。
本協会からは小川理事長らを中心として私も出席をいたしましたので、大々的に開催した開所式の様子をお伝えいたします。我々は昨年の九月にも「道の駅」の建設状況を視察しておりましたので、まずは「道の駅」の概要やポイントを振り返りつつ、その上で開所式当日の様子をお伝えさせてください。
「道の駅」の概要
この「道の駅」は、N連事業による小規模ダム設置と導水パイプ敷設により村人が年間を通じた飲用・生活用水を得られるようになったことから、豊富に得られる水を使った農作等による果樹・野菜など村の産物を販売する施設があれば村人の生計向上が更に見込めると考え整備したものです。また、豊富に水が使えるようになったからこそ水洗の公衆トイレも設置することができました。マレーシアの公衆トイレは有料であることから、産物の売り上げだけでなくトイレ利用料も村落組織が積み立てることで、導水システムと「道の駅」の自律的な維持管理を行います。国道沿いに「道の駅」を整備したのも一般のトイレ利用客を呼び込むためで、トイレに立ち寄った方々が併せて村の産物を購入してくれること狙っています。トイレ利用客の利便性を向上させるため、併せて道の駅へのアクセス道と駐車スペース(七三五㎡)も整備してあります。
関係者と協議の上、道の駅は「Michinoeki Sabal Market」と命名され、令和六年三月後半に運営を開始しました。

バリアフリー・トイレの設置
この度の「道の駅」は「日本政府の支援」と「日本のNGO団体の協力」によって整備されたものであるため、日本の清潔なトイレ事情を導入すべく、工事担当者や村人たちへ理解をして貰うべく細かい打ち合わせを日本マレーシア協会の在サラワク・コーディネーターである酒井和枝さんらが行ってくれました。清潔なトイレを維持管理するためのワークショップ等も開催し、村人たちが自律的な運営体制を構築する支援も行っております。
そして、ここでポイントになるのは、男女のトイレとは別に「バリアフリー・トイレ」を設置したことです。車いすなど身体が不自由な方もお使いいただける公衆トイレはマレーシアではまだ珍しく、「道の駅」という日本文化と併せて今後のモデルケースとなれば嬉しく思います。

開所式の概要
さて、ここからは開所式の様子をお届けいたします。開所式は令和六年四月二十七日(土)に開催され、当日はマレーシア政府を代表して、ダト・スノーデン・ラワン・サラワク州観光・創造産業・芸術省副大臣(活動地域選出州議会議員)とダト・スリ・ドリス・ソフィア・ブロディ連邦議会議員(活動地域選出)、在マレーシア日本政府機関を代表して、山下一義・在コタキナバル領事事務所長、本協会小川理事長のほか、サラワク森林局、サラワク森林公社、スリアン地区役所長、地域村落村長及び住民ら約三百名が参加いたしました。

本協会の植林活動地域から選出された、スノーデンサラワク州議会議員とドリス連邦議会議員を中心に、植林活動に関係する日マ両政府機関の方や行政関係者、そして何より地域村落の方々が数多く出席してくださったことは大きな出来事でした。
この開所式を通して、地域村落の方々が「道の駅」に愛着を持っていただき、色々な方々が応援していることを実感し、末永く自律的な維持管理をするモチベーションに繋がっていればこれ以上ございません。
開所式のスケジュールと内容
開所式のスケジュールにつきましては次の通り進行いたしました。
まず、午前九時にゲスト到着、午前九時半にVIPが到着、午前十時からオープニングスピーチです。オープニングスピーチと全体の司会進行は、植林活動地域の小学校の元教師であり、定年退職後の現在は植林活動の協力をしてくれているベティ先生がしてくださいました。
その後は本協会小川理事長のスピーチがありました。以下、スピーチ内容をご紹介いたします。

お集まりの皆様、こんにちは。私は日本マレーシア協会の代表である小川孝一です。 本日はダトー・スノーデンさんをはじめ、多くの皆様に参列いただき、ありがとうございます。 私たちの団体は1956年に設立されましたが、1995年からこのサラワク州で熱帯雨林の再生事 業を行っています。 そのため、長い間、ダトスリ・アワンテンガさんやダトーレンさんにも大変お世話になってきました。 世界の中で、ブラジル・アマゾンとこのボルネオ島の熱帯雨林は世界の宝物です。 私たちは皆様と協力して90万本の木を植えてきました。これはマダム酒井にお願いしてできたことですが、これまでの皆様のご協力にお礼を申し上げます。森と水は人間の生活の基礎です。日本でも川の水は生活用水として守っています。協会はサラワク州でもこれまで2か所の小規模ダムと1か所の導水管の整備を実施して、「水の供給」 を行いました。 そして、本日は「道の駅」を皆様にお渡しいたします。この地の作物の販売所として使っていただきたいと思っています。
また今年から10年間、毎年日本の学生が1回15名、年4回60名サラワク州に来て熱帯雨林再生事 業を行います。私は昨年11月にアンワール首相にお目にかかり、こうした熱帯雨林再生事業のご報告をし、ご理解をいただきました。首相にはサラワク州政府の下で、地元の皆様、森林局、森林公社、サラワク大学のご協力で事業が順調 に行えていると伝えました。 その際、首相から、「日本から学生が来るならマレーシアの学生も仲間に入れてほしい」とのご提案を いただきましたので、そのご提案を将来実施したいと思っています。
最後に、協会はマレーシアの本を翻訳して日本で発行しています。「ハラル」や「シャーリア法」「バンサマレーシア」と言った本を出し、マレーシアの文化の紹介に努めていることも申し上げます。マレーシアで木を植え、水を供給し、マレーシアの文化の紹介を日本にする、こうした努力をこれから も続けて参ります。これからもサラワク州での協会活動へのご協力をお願いいたしまして、私のご挨拶といたします。どうもありがとうございました。
次は、山下一義・在コタキナバル領事事務所長より在マレーシア日本政府機関を代表してスピーチをいただきました。

そして最後に、主賓であるスノーデンサラワク州議会議員よりスピーチをいただきました。マレー語で話した後に英語でも内容を説明してくださり、本協会の植林活動へ感謝の言葉をいただきました。

皆様のスピーチの後は、贈答品のお渡しと、「道の駅」のメモリアルプレートへ主賓であるスノーデンサラワク州議会議員からサインをいただきました。

なお、この度の開所式へ本協会の古屋圭司会長と有村治子副会長は出席が叶わなかったため、両名から託された署名入り親書を小川理事長からスノーデンサラワク州議会議員(写真中央)とドリス連邦議会議員(写真左)へお渡しいたしました。

その後は「道の駅」のテープカット式と、スノーデンサラワク州議会議員とドリス連邦議会議員が「道の駅」の産物販売所と公衆トイレの視察を行いまいました。賑わっているセレモニーの中、お二人は積極的に村人たちと交流をしておりました。

最後にはみんなで机を囲んで食事をしました。関係各者が交流をすることができ、無事セレモニーは終了となりました。この度の開所式を通して、N連の事業成果を州政府・連邦政府とも共有し、ひいては政府が行う他地域の村落生活向上プログラムのモデルになって欲しいと願っております。 この度の開所式は準備から当日の進行まで、日本マレーシア協会の在サラワク・コーディネーターである酒井和枝さん、アイシャさんらに多大なご尽力を賜りました。この場をお借りしてお礼申し上げます。