※本記事は、本協会の会報「マレーシア」Vol.57(2025年5月25日発行)に掲載されたものです。
二〇二三年十月に小菅雄磨理事補が本協会事務局へ入局してから、約一年半が経過しました。入局後は約二ヵ月間マレーシア・サラワク州に滞在して植林現場や現地の人々と交流を経験し、東京の協会事務所では公益法人の運営実務を学びながら日本とマレーシアを行き来して主にサラワク州で経験を積んできて貰いました。
しかし、サラワク州における熱帯雨林再生事業を中心に活動して経験を積んできた半面、まだマレー半島側の関係機関に訪問して挨拶等が叶っていない状況がございました。そこで今回、二〇二五年二月二十三日~三月二日の期間で、小菅雄磨理事補がクアラルンプール及びペナン州のマレー半島側関係機関を訪問いたしました。以下訪問の様子を報告いたします。
はじめに
日本マレーシア協会の小菅です。この度、クアラルンプール及びペナン州のマレー半島側関係機関を訪問して参りました。今回は日本財団ボランティアセンターと実施する「オランウータンの森再生プロジェクト」第五陣の同行を終えて第六陣が始まるまでの約二週間を活用したので少々慌ただしいスケジュールでしたが、上手く予定を組むことができました。
今までサラワク州での活動が中心で、本協会で働き始めて約一年半が経つにも関わらず繋がりのあるマレー半島側の方々にご挨拶が出来ていないことを申し訳なく思っておりました。そんな折、本協会の皆様のご協力で多くの方々とご挨拶が叶ったことを大変嬉しく思っております。私の現状は、サラワク州には慣れ始めたがマレー半島側は全く経験がない…という一般とは真逆の状態であったので、今回各所へ訪問が出来たことはご挨拶だけでない意味もございました。
本協会アドバイザーの佐藤恭仁彦様(元JICAマレーシア事務所長)からは、独立行政法人国際協力機構(Japan International Cooperation Agency・通称「JICA」)マレーシア事務所の菅原美奈子所長、そしてマレーシア日本人商工会議所(The Japanese Chamber of Trade & Industry, Malaysia・通称「JACTIM」)の北栄和弥様(Chief Coordination Officer)をご紹介いただきました。また、本協会江上一郎理事からは、IHIマレーシア現地法人であるIHI POWER SYSTEM MALAYSIA SDN BHDの大野恵美様(Managing Director)をご紹介いただきました。そして、本協会森林高志理事が在マレーシア日本国大使館の櫻井洋子様と、本協会新井卓治専務理事が在ペナン日本国総領事館の町田信也総領事と繋げてくださりました。以下、訪問の様子を時系列に沿ってお伝えいたします。
JICAマレーシア事務所訪問
サラワク州でのプロジェクトを一旦終え、二〇二五年二月二十三日にサラワク州のクチン国際空港からクアラルンプールへ移動しました。クアラルンプールも昨年に一度行った程度で、街を少し散策したりペトロナスツインタワーや紀伊國屋書店クアラルンプール店へ立ち寄ったくらいでお恥ずかしながらまだまだ土地勘があるとは言えません。その日は早めにホテルで休み、翌日からの各所訪問へ備えます。
翌日二〇二五年二月二十四日、クアラルンプールにあるJICAマレーシア事務所を訪問いたしました。当日は菅原所長とHafiz様(Senior Program Manager)が対応してくださいました。Hafiz様は東方政策(ルックイースト政策)一三期生で筑波大学をご卒業されており、菅原所長とHafiz様へ本協会が日本マレーシア叢書として出版した「ルックイースト政策40年の軌跡 1982-2022」の日本語版並びに英語版を贈呈したところ、「そうなんですよ! ルックイーストとは何か… がまとまっている本って実はないんです。これは貴重な本ですね。」と仰っていただき喜んでくださいました。著者の加藤暁子様や本の内容についてもよくご存じのようで、このことについても書いてくれている、ルックイースト留学生の友達について書かれている、のようなお話ばかりでした。
菅原所長とHafiz様とは、当協会の会報誌に沿って協会の事業等をご説明し、お二人からも資料に沿ってJICAマレーシアの事業や現状と展望についてお話いただきました。自由闊達な意見交換ができ、有意義な情報共有が出来ました。

IHIマレーシア訪問
クアラルンプールで宿泊したホテルの近くにあるレストランの店員と仲良くなり、少しクアラルンプールにも慣れてきました。
二〇二五年二月二十五日の午前、クアラルンプールにあるIHIマレーシア現地法人であるIHI POWER SYSTEM MALAYSIA SDN BHDへ訪問いたしました。当日は大野恵美様・木村篤様・岡崎未央様の三名が対応してくださりました。自己紹介と本協会の理事からご紹介を受けて来訪した旨をお伝えし、少々か細い繋がりでお伺いしましたが終始好意的に受け入れてくださいました。
まずは私から本協会の会報誌に沿って熱帯雨林再生活動を中心に事業説明をさせていただき、植林について興味深そうに聞いてくださりました。その後、木村様よりプロジェクターを用いてIHIマレーシアの事業説明等をしていただきました。飛行機のエンジンやプラントなどから、LNGをはじめ水素やアンモニアなどにも力を入れているお話を伺いました。大野様とは日本へ戻った後に紹介してくれた理事と一緒にお会いしてお食事でもしましょうとお話をしました(社交辞令で終わらず、その後日本での会食は実現いたしました)。

在マレーシア日本国大使館訪問
IHIマレーシアへ訪問した後、お昼を食べる時間もないままGrabで配車して次に向かいます。兼ねてより在マレーシア日本国大使館の櫻井洋子様や谷貝勇樹様にはお世話になっている旨伺っており、今までメールのやり取りだけでしたのでやっとご挨拶が出来るという気持ちでした。
二〇二五年二月二十五日の同日午後、クアラルンプールにある在マレーシア日本国大使館へ訪問いたしました。私が大使館入口にて少々入館に手間取ってしまっていたところ、ちょうど外出から戻ってきた櫻井様に助けていただいて何とも情けない初対面となりました。当日は櫻井洋子様と田中宏樹様がご対応くださり、谷貝様は急用でご不在でした。
お二人には改めて本協会の事業内容をご説明し、今年が本協会が熱帯雨林再生の植林活動を始めて三十周年であること、来年には植林本数が百万本に達する見込みであること、再来年にはマレーシア独立七十周年且つ日本マレーシア協会設立七十周年(正確にはマレーシアが独立した一九五七年一月の前月である一九五六年十二月に設立)であることなど近況のお話も含めてお伝えいたしました。事業内容の説明に関して、熱帯雨林再生事業だけでなく本の翻訳・出版についても大変ご関心を持ってくださっており、次回はマレーシア連邦政府アンワル・ビン・イブラヒム首相のマダニ(MADANI)政策についての本を出版予定とお伝えしたところ「是非読みたいです」と言っていただきました。
また、東京の本協会事務所には今後在マレーシア日本国大使館へご赴任予定の方がご挨拶にいらっしゃることがあるのですが、二〇二五年二月六日に今度在マレーシア日本国大使館へご赴任予定の方とお会いしていたのでその旨をお伝えしたところ「よくご存じですね(笑)」と笑われました。和やかにお話し、またクアラルンプールへいらしたらお立ち寄りくださいと言っていただきました。

JACTIM訪問
JACTIMの事務所は私が今回宿泊したホテルから程近いようだったので、今回はGrabではなく徒歩で向かうことにしました。天気の良いクアラルンプールの中心街でスーツにネクタイを締めているのは私だけだったので少々周りの視線を感じました。
二〇二五年二月二十六日、クアラルンプールにあるJACTIMの事務所へ訪問いたしました。JACTIMは一九八三年十一月に設立された日系企業の利益擁護及び会員相互の親睦等を目的とした経済団体であり、当時のマハティール・ビン・モハマド首相と中曽根康弘首相の間で合意がなされマレーシア政府認可のもと「マレーシア日本人商工会議所」を開設するにいたりました。当日は北栄和弥様と樵田侑樹様が対応してくださり、本協会の活動を知りたいと前向きにお話を聞いてくださいました。北栄様は「民間や公益は役割が異なるが根っこの大切にしていることに共通点はある」とお話くださり、マレーシア全体や熱帯雨林再生事業を行っている自治色の強いサラワク州に対して企業が目を向け、それを支援しながらちゃんと現地にお金が落ちるように経済循環をどう構築するか…といったお話をしました。今後どのように協力していけそうか色々な意見交換が出来たので良かったです。

在ペナン日本国総領事館訪問
クアラルンプールでの各所訪問を終え、二〇二五年二月二十七日にクアラルンプール国際空港からペナン州へ移動しました。初めてのペナン州ということもあり、その日は少し街を見て回り早めにホテルで休みました。 そして翌日二〇二五年二月二十八日、ペナン州の州都ジョージタウンにある在ペナン日本国総領事館へ訪問しました。当日は町田信也総領事が対応してくださり、本協会の事業について近況をご報告いたしました。町田総領事とは二〇二四年十一月八日に東京の本協会事務所でご赴任前にお会いしており、今回はマレーシア・ペナン州の地でお会いすることができました。

総領事公邸での夕食会へ参加
在ペナン日本国総領事館へ訪問した同日の夜、町田総領事にご招待いただき総領事公邸で開催する夕食会に参加させていただきました。夕食会には在ペナン日本国総領事館の方々をはじめ、ペナン日本人会・ALEPS(Alumni Look East Policy Society)・JAGAM(Japan Graduate’s Association of Malaysia)など日本に縁のあるペナン州の様々なコミュニティの方々がいらしていました。
町田総領事の冒頭の挨拶では本協会と私の名前を出してくださり、それもあり皆様沢山話しかけてくださいました。サラワク州での熱帯雨林再生事業だけでなくペナン州とケダ州でマングローブ林再生の植林事業もしているため、多くの方々が興味深く話を聞いてくれました。特に日本の大学へ留学に来ていたALEPSやJAGAMの方々からは、「植林や他の活動など一緒にできることがあればいつでも言って欲しい」と言ってもらいました。ALEPSの方々はJICAマレーシアでお会いしたHafiz様をよくご存じで、東方政策留学生のコミュニティは強いなと感じました。

さいごに
私はまだまだ若輩者の身ですが、本協会の皆様のご協力で多くの方々とマレーシアでお会いすることができました。お会いした方々とのご縁を大切にしてこれからも精進いたしますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
