熱帯雨林再生活動

【会報記事】日本財団ボランティアセンター「オランウータンの森再生プロジェクト」第3陣・第4陣同行レポート

※本記事は、本協会の会報「マレーシア」Vol.56(2025年1月10日発行)に掲載されたものです。

 日本マレーシア協会は日本財団ボランティアセンター(以下、日本財団ボラセン)と協働し、全国の大学生たちをマレーシア・サラワク州へ派遣して熱帯雨林再生の植林活動をする「オランウータンの森再生プロジェクト」を二〇二四年より開始いたしました。本プロジェクトは年四回・毎回約十五名の学生ボランティアを十年間植林現場へ派遣し、先住民の村人と共に植林作業を行うことで十万本の植林を目指すものです。学生の募集は日本財団ボラセンが提供する日本最大級のボランティアプラットフォームである「ぼ活!」(https://vokatsu.jp/)で行われ、学生のセレクションは全て日本財団ボラセンが行っています。学生派遣の第三陣が本年七月二九日~八月九日に、第四陣が本年八月二六日~九月七日に行われ、日本マレーシア協会からは第一陣・第二陣に続いて小菅雄磨理事補が同行しましたので以下報告いたします。

はじめに

 日本マレーシア協会の小菅です。日本財団ボラセンと協働して実施する「オランウータンの森再生プロジェクト」の第三陣と第四陣に同行して参りました。今回の第三陣と第四陣につきまして、大きなプログラムの流れは植林を中心に第一陣・第二陣と同様に構成しておりますが、今回は新しく取り入れたプログラム内容があるのでその様子を中心にお伝えいたします。

 今回新しく取り入れたのは、「地元小学校への訪問」「胡椒の収穫体験」「サラワク大学の学生との交流」「下刈り作業」「現地日本企業訪問」です。 また、第四陣においては日本財団の笹川陽平会長が現地視察へ来て学生と交流をいたしましたので併せてお伝えいたします。

 本プロジェクトにおける植林を中心とした計十二日間の流れと様子つきましては、本協会の会報誌五十四号へ詳細に掲載してありますのでそちらをご覧ください。

地元小学校への訪問

 第三陣と第四陣では、新しく地元小学校への訪問をプログラムへ加えました。訪問したのは植林地域の近くの地元小学校で、第三陣では「SKトリアン小学校」に、第四陣では「SKクライト小学校」に伺いました。この「SK(Sekolah Kebangsaan)」とはマレー系の国民学校であることを指し、国語(マレー語)で教育する小学校を意味します。

 このプログラムは日本の大学生と地元小学生の「国際交流」を図ったもので、本プロジェクトへ参加した学生たちには小学校で子供たちと何をして遊ぶかを渡航前から考えて貰いました。

 学生たちは自分たちが担当する小学一年生・三年生・五年生のクラスにそれぞれ分かれ、「だるまさんがころんだ」「椅子取りゲーム」「折り紙」など日本の遊びで大いに盛り上がりました。これらの遊びについては運営側で何も指示は出しておらず、当日に何をするか、どうしたら現地小学生たちが喜んでくれるかについて、全て学生たちが主体的に考えて準備を進めました。地元小学校訪問の前日に、学生たちがホテルで自主的に集まって打ち合わせや準備を進めている姿を見たことを思い出します。

「だるまさんがころんだ」で遊んでいます

 また、第三陣では小学校の敷地内で小学生との植林も行いました。日本の学生と地元小学生だけでなく、校長先生を中心に教職員や国境警備隊の方々も大勢参加して総勢百名近くで植林を行うことができました。  

 本協会の植林活動は地元小学校でも環境教育の一環として広く取り入れていただいており、日本の大学生と地元小学生が植林を通して国際交流を図れたことは次世代の育成においても大きな意味があると感じました。

地元小学生と植林

胡椒の収穫体験

 マレーシア・サラワク州は胡椒の産地として有名で、学生とバディを組むビダユ族の村人も胡椒栽培を収入源の1つとしています。今回はバディやバディの親戚が運営する胡椒畑にて、胡椒の収穫体験をいたしました。

 胡椒は熱帯地域で湿気の多い高地でよく育つ多年生のつる性植物で、胡椒畑はバディ達が住むトンニボン村から車で移動した後に少し小高い場所まで歩いたところにあります。  

 学生たちは村人から胡椒の収穫方法を教えて貰い、つるから出る枝からぶどうの房のように成っている実を丁寧に収穫していました。村人から摘み取った胡椒の実を食べてみるよう言われ、口にした学生が「ほんとに胡椒だ!」と驚いていたことが印象的でした。普段日本で口にする胡椒もサラワク産のものが多くあるため、身近にあるものがどこから来ているのか実感する機会になりました。

胡椒の収穫

マレーシア・サラワク大学の学生との交流

 今回のプログラムにおいて、サラワク州初の国立大学であるマレーシア・サラワク大学(UNIMAS)の教員であるエフェンディ博士とカミル博士の修士課程のゼミ生が計四名参加してくれました。

 サラワク大学は研究機関として植林活動に多大なご支援をいただいており、日本の学生たちはサラワク大学の学生たちと「研究内容」や「なぜその分野に取り組もうと思ったのか」など大学生ならではの会話をしていました。サラワク大学の学生は英語が堪能であるため、日本の学生たちも積極的にコミュニケーションをとっていましたね。  

 また、サラワク大学の学生は植林地であるアペン国立公園に設けた施設で一泊するプログラムに参加してくれ、学生達とは夜の熱帯雨林を散策する「ナイトウォーク」も一緒に活動して国際交流することができました。

サラワク大学の学生(中央4名)と交流しています

下刈り作業

 植林活動は木を植えるだけではなく、植えた後のメンテナンス活動が非常に重要です。第一陣・第二陣では植林した木々へのマーキング作業をして貰いましたが、第三陣・第四陣では下刈り作業をして貰いました。

 下刈り作業は、植林した木々の周りに生い茂った雑草を取り除くことで植林した木に十分な栄養がいくようにする作業のことです。熱帯雨林の雑草は力強く、数か月もすれば雑草が生い茂り植林した木のほとんどは育たなくなってしまいます。植林地で植林活動ができるのも、村人が伝統的な小刀で彼らの生活必需品である「パラン」を使って下草を刈り取り地面を切り開いてくれたからこそ。学生達はバディの村人から「パラン」を借りて、扱いに十分注意しながら下刈り作業をしました。植林した木の近くに似た雑草が生えていることもよくあるので、学生たちは植林した幼い木を刈ってしまわないよう気を付けて作業を進めていました。

下刈り作業

 なお、今回第三陣が下刈り作業をした場所は「第一陣が植林した場所」で、第四陣が下刈り作業をした場所は「第二陣が植林をした場所」でした。この流れで、第三陣と第四陣が植林した場所のメンテナンスを第五陣と第六陣がすることを計画しており、本プロジェクトに参加してくれた学生たちの間で植林活動の循環を生んでいければと考えています。

現地日本企業訪問

 マレーシア・サラワク州において活躍する現地日本企業を学生に知って貰うべく、第四陣において現地日本企業訪問を取り入れました。今回は、サラワク州の州都である「クチン」で事業を展開する「太陽誘電株式会社」の現地法人である「TAIYO YUDEN(SARAWAK)SDN. BHD.」の現地工場を見学させていただきました。太陽誘電株式会社の現地法人社長である「遠山雅史」様はクチン日本人会の会長も務められており、そういった繋がりもあってこの度の訪問にご協力を賜りました。  

 太陽誘電株式会社は誘電体セラミックを使用したコンデンサなどの精密電子部品を強みとしており、工場見学では技術者の方から説明を受けながらそれらの部品ができる工程を見させていただきました。工場見学後はざっくばらんにお話をする機会を設け、「外国で仕事をすることについて」や「なぜサラワク州・クチンという場所に進出したのか」など事業進出におけるサラワク州の捉え方についても現地日本企業の方から伺うことができました。

太陽誘電現地法人の皆様と現地工場にて集合写真

日本財団笹川会長の現地視察

 第四陣が活動する二〇二四年九月一日、日本財団の笹川陽平会長がサラワク州・アペン国立公園で行っている本プロジェクトの視察へ来てくださいました。 

 笹川会長も学生たちと一緒に植林活動を行い、植林する穴を掘る作業から苗木をポットから外して植林する作業まで、年齢を感じさせない力強さでした。植林活動後は学生たちと昼食を共にし、日本財団の話から日常の話まで、色々な話に花を咲かせておりました。

 本プロジェクトは日本財団ボラセンと協力して十年間続けていく長い活動です。十年間の中においては、植林活動を通して学生たちに良い経験・良い学びになる時間を提供するため色々な可能性を常に模索していく必要があると考えています。そうした状況の中、プロジェクトが始まった一年目のこのタイミングで笹川会長に植林現地を見ていただけたのは大きな意味があると思っています。

笹川会長と第4陣の集合写真
第3陣の集合写真

さいごに

 この度の同行で「オランウータンの森再生プロジェクト」の一年目が無事に終了いたしました。日本財団ボラセンの皆様や現地コーディネーターの酒井和枝さん・アイシャさんらを中心に、多くの方々の協力で一年間を終えることができました。この場をお借りして感謝申し上げます。

 来年からは「オランウータンの森再生プロジェクト」の二年目が始まります。一年目の最初に良いスタートを切ってくれた第一陣・第二陣と、プログラムの充実に貢献し次に繋げてくれた第三陣・第四陣には感謝しております。そして何より、みんな怪我無く無事にプログラムを終え、良い経験が出来たと感想を伝えてくれたことが嬉しいです。学生あってこその本プロジェクト、来年の第五陣から第八陣でもみんなに良い経験をして貰えるよう精一杯努めさせていただきます。

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