お知らせ・ご挨拶など

長期的な公益事業の運営方針について ー公益法人移行後の会報誌第六〇号に寄せてー

※本記事は、本協会の会報「マレーシア」Vol.60に掲載されたものです。

本誌は今号にて、公益法人移行後、第六〇号となりました。関係各位のご協力に心より感謝申し上げます。

 本協会では、六月一七日(水)に定時総会及び理事会を開催し、昨年度事業及び会計報告の他に、「長期的に安定した公益事業の維持を目指した運営方針」についても協議し、承認を得ました。

当年度は、マレーシアにおいて本年、植林本数が「一〇〇万本」に達する予定のサラワク州における熱帯雨林再生活動、同州における水環境整備による生活改善事業、クダ州及びペナン州におけるマングローブ林再生活動などの事業を継続しており、国内でも、マレーシア公務員研修への協力やマレーシア書籍の翻訳書出版協力活動などを通じて、日マの民間交流促進に寄与する活動を順調に進めています。

しかしながら、今後も長期的に安定した公益事業を維持していくためには、様々な課題を乗り越えていく必要があるため、長期的に安定した公益事業の維持を目指した運営を行っていくための基本的な方針を、先の定時総会及び理事会にて決定しました。 本誌節目の六〇号にあたり、「長期的な公益事業運営方針」について、これまでの活動を振り返りながら、下記にご紹介します。

長期的な公益事業運営方針

日本マレーシア協会は、一九五六年一二月に設立、一九七九年七月に社団法人となり、日マの友好親善活動に取り組んできました。二〇一二年一二月に公益法人へ移行後は、国内及びマレーシアにおける公益事業を拡大し、これまで順調に推移してきました。
 しかしながら、今後、乗り越えていくべき新たな課題が生じており、長期的に安定した公益事業の維持を目指して、基本的な運営方針を定めました。

新たな課題

昨年、サラワク州における「熱帯雨林再生活動」が三〇周年となり、これまでの植林本数が、本年末に一〇〇万本へ達する予定です。
 今後は、「一〇〇万本」の植栽木の維持保全にも、新たな努力を傾注していくことになり、そのための費用を確保する必要が生じています。
 これまで「植林活動」へのご支援を頂く際に、現地の直接的な植林費用へのご協力を頂いてきましたが、本協会の管理費用は求めてきませんでした。 今後、「熱帯雨林再生活動」を持続的に継続するためには、この「管理費用」を調達する必要があります。
 また、マレーシア、日本両国において顕著になりつつある物価上昇を、考慮しなければなりません。
 さらに、一九九〇年代後半から一リンギット約三〇円だった為替レートが、近年大きく変化し、直近は四〇円台(約三三%の上昇)となり、今後、四〇円台後半から五〇円台となることもあり得る情勢となっています。
 国内でも、公益事業の情報発信は、以前は会報誌の発行・配布のみでしたが、インターネット時代になり、ウェブサイト(日本語・英語)での情報発信に努めていますが、今後も、ウェブ発信の強化は不可欠です。

二〇一四年に開始し、これまで一五冊のマレーシア書籍の邦訳書を発行してきた活動もあり、情報発信のための費用拡充が必要となっています。

対処方針案

(一)会費改定による一般寄付の確保

法人及び個人の年会費は二五年前から、賛助会費と理事協力金は一五年前から改定をしていません。これを二〇二七年度から改定する予定です。

(二)「植林費用」の対応

 今年達成する植栽木「一〇〇万本」の維持保全のための新たな資金を、公的資金、民間資金を問わず獲得する努力を行います。

個人や団体からのご支援を受けて行っている熱帯雨林再生活動の一本あたりの植林費用は、一五年前から漸次変更してきましたが、昨今の大幅な物価上昇と為替の変動により、現状に合わせた値上げが必要となってきたため、二〇二七年度から一律に改定する予定です。また、植林費用に加えて、国内の管理費用を含めたご支援を頂けるように検討してまいります。
 なお、今後の人材育成を含めた管理費用の調達については、公的な支援も得られるように努力を行います。

(三)「情報発信費用」への対応 ウェブサイトの拡充を含めた情報発信費用についても、新たなご支援獲得に向けた方策を検討していきます。

公益事業「五つの柱」

本協会では、会員及び支援者の方々のご協力を得て、国内及びマレーシアにおいて、様々な活動を公益事業として実施しております。

これまで構築してきた公益事業の「サラワク州における熱帯雨林再生活動」、「クダ州・ペナン州におけるマングローブ林再生事業」、「マレーシアの書籍の翻訳出版事業」、「マレーシア政府公務員研修への協力事業」に加えて、サラワク州における熱帯雨林再生活動の成果をもとに今後構築していく「一〇〇万本維持保全活動に関する事業」の五つを、長期的な運営方針のもとで行うこれからの公益事業「五つの柱」として、関係図とともにとりまとめました(次頁以降に掲載)。

七〇周年に向けて

七月一七日(金)、衆議院議員会館会議室で日本マレーシア友好議員連盟総会が開催され、来年の日マ外交関係樹立七〇周年、日本マレーシア協会設立七〇周年、日マ経済協議会設立五〇周年に向けた関係省庁及び関係団体のヒアリングが行われ、日マ議連の古屋会長(本協会会長)、有村幹事長(本協会副会長)、宮下事務局長ほか議連所属国会議員、外務省及び林野庁幹部、本協会理事長らが参加しました。

 本協会は公益事業「五つの柱」をもとに、昨年三〇周年を迎え、今年植林一〇〇万本に達する熱帯雨林再生事業を中心に活動状況を報告し、今後の連携について話合いました。

サラワク州における熱帯雨林再生活動

一九八〇年代後半から、世界的に環境問題への関心が高まり、特に、熱帯雨林の急激な減少に注目が集まりました。アジアでは、ボルネオ島のサラワク州が取り上げられ、日本とマレーシアへの非科学的な批判が多く見受けられる事態が広まりました。

そんな中、本協会では、一九九一年六月に都内で「国際シンポジウム サラワク森林資源の保全と持続的開発」を開催し、日本とサラワクの専門家からの報告をもとに、現状への正しい認識について広く発信しました。

当シンポジウムがきっかけとなり、本協会広島支部(当時)の方々を中心にサラワク州森林局と共に森林調査と保全のための取り組みについて協議を開始し、一九九五年からバライ・リンギン保護林で、地域住民と協働し熱帯雨林再生活動を開始しました。

その後、企業、団体からのご支援を得ながら、アペン保護林、バカム保護林、サンパディ保護林、サバル保護へと活動場所を広げていきました。

 二〇一〇年から、国立マレーシア・サラワク大学の専門家が、旧伐採地の二次林における森林再生地の研究として、植生や土壌調査を開始し、二〇一四年に同大学と協力協定を結び、学生のための実習地として定期的な森林調査を行うようになりました。

 二〇一一年から、日本の大学生が自主的に植林活動に参加し、地域の小学校や村人と交流するプログラムを開始し、新型コロナによる渡航制限時まで毎年実施しました。

 地域社会と共に取り組む森林保全活動が評価され、二〇一六年にアペン保護林が、二〇一八年にサバル保護林がそれぞれ国立公園に昇格し、二〇一九年に本協会はサラワク州政府と「森林景観再生(FLR)プログラム」推進のための覚書を締結しました。

 二〇二一年より、日本NGO連携無償資金協力事業として、熱帯雨林再生活動地域にある村落の水環境改善事業を開始し、長年協働している村落の生活向上に取り組んでいます。

 二〇二四年からは、日本財団ボランティアセンターの協力で毎年夏休みと春休みに日本の大学生がサラワクへ派遣され、アペン国立公園で植林作業などに参加しています。

 昨年三〇周年を迎えた当事業は、このようにサラワク州政府機関、活動地域の人々、日本の個人や企業・団体などのご協力により、様々な方々が参加する活動へと発展しています。

クダ州・ペナン州におけるマングローブ林再生事業

サラワク州の活動地では、二〇一一年から小中高校が参加する活動を始めましたが、環境教育面を強化するため、二〇一四年に、この分野で先進的な活動を行っているペナン州の国立マレーシア科学大学との交流を開始しました。その後、同大学地域教育研究センターより、地域社会と協働したクダ州でのマングローブ林保全について提案を受け、同センター専門家との協議や現場視察を経て、二〇一八年から日本の民間助成金を得てマングローブの植林活動を開始しました。

二〇一九年から企業のご支援を得て、マングローブ林再生事業として、地域住民、現地の大学生やボランティアが参加する育苗・植林作業と、地域村落や小学校を対象とした支援プログラムなどを実施しています。

 二〇二三年からはペナン州のマングローブ保護林での活動も開始しています。

マレーシアの書籍の翻訳出版事業

二〇一六年まで、東京ビッグサイトなどで開催されていた東京国際ブックフェアに、毎年マレーシアの出版社が出展していたことがきっかけとなり、二〇一三年にマレーシア翻訳書籍研究所(ITBM)から、マレーシアの書籍の翻訳出版への協力について提案を受け、本協会理事や関係者による翻訳・校正・割付作業協力と紀伊國屋書店による国内販売協力による翻訳書刊行事業を開始しました。

 二〇一四年に『ハラルをよく知るために』を共同出版して以来、本年五月の『より良いマレーシアのためのSCRIPT』まで一五冊を日本マレーシア協会叢書として発行しています。

 二〇一八年に当時のマレーシア教育大臣来日時に紀伊國屋書店本店にて翻訳書出版記念会を開催したほか、翌年にはマレーシアにて国立大学一三校の出版局と、翻訳書の発行協力のための覚書を締結しました。

マレーシア政府公務員研修への協力事業

本協会がマングローブ林再生事業で提携している国立マレーシア科学大学の人材育成センターでは、マレーシア人事院による「ルックイースト政策」プログラムの一環として、毎年都内で、日本の政府系機関と協働し、マレーシア政府公務員中間管理職のための研修プログラムを行っていましたが、新型コロナによる休止期間後に協働先の方針が変わったため、新たな協力先として本協会へ依頼がありました。二〇二三年から、本協会が研修プログラムの中の講演の一部、省庁訪問、研修修了式開催などへの協力を行うことで同プログラムは再開し、毎年二〇名前後のマレーシア政府若手幹部が研修に参加しています。

一〇〇万本維持保全活動に関する事業

前述の通り、サラワク州における熱帯雨林再生活動で植林してきた本数が、本年末で一〇〇万本となります。

 既往植林一〇〇万本を維持保全し、植栽後の森林が長期的に生存・成長して「生態系として回復」していくための森林管理を、日本とマレーシアの官民が協力し、調査研究、人材育成、情報発信等を含めた包括的な体制の構築を目指し、本協会の公益事業「第五の柱」とするべく取り組んでまいりますので、今後とも、ご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。

関連記事

TOP