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小菅理事補のマレーシア訪問記 ~サラワク州政府機関及び在マレーシア日本国大使館への訪問~

本協会が一九九五年よりマレーシア・サラワク州で始めた熱帯雨林再生事業は昨年で三十周年になり、二〇二六年で植林総数百万本となります。そして来年は日マ国交樹立七十周年・本協会設立七十周年を迎えます。二〇二四年からは公益財団法人日本財団ボランティアセンターと協働して年四回一〇年間学生ボランティアを派遣する「オランウータンの森再生プロジェクト」を開始し、本記事を執筆している二〇二六年八月中旬までに第一一陣までの学生派遣を終え、総勢約百四十名に及ぶ学生が先住民とバディを組んで実施する熱帯雨林再生の植林プログラムに参加しました。

また、二〇二六年一月からは山九株式会社のご支援による「山九の森」熱帯雨林再生プロジェクトをサラワク州スリアン地区のサバル保護林にて新たに開始しました。

 そしてこの度、二〇二六年六月二十二日(月)から七月二日(木)までの日程で、小菅雄磨理事補がサラワク州及びクアラルンプールへ出張しました。 

サラワク州ではサバル保護林での「山九の森」植林活動地と新規苗木センターを視察し、アペン国立公園ではサラワク州政府認可のもと「日本NGO連携無償資金協力」の事業で建設した小規模ダムの視察と、「オランウータンの森再生プロジェクト」で同地域に植林して小規模ダム建設に伴う一時的な開発による伐採を復元する活動場所の視察を行いました。その他、サラワク州森林局、サラワク森林公社、セメンゴ野生動物センターなど州政府関係機関へ表敬訪問をしました。クアラルンプールでは、在マレーシア日本国大使館で四方敬之特命全権大使へ表敬訪問を行い、大使公邸での昼食会にもご招待をいただきました。以下、出張の様子を報告いたします。

はじめに

日本マレーシア協会の小菅です。この度は、サラワク州とクアラルンプールの二か所を巡り、現地の事業地と、本協会の活動を支えてくれているサラワク州政府関係機関と在マレーシア日本国大使館への表敬訪問を行いました。現地事業を報告して今後の計画も共有をすることで、州政府機関及び日本政府機関と連携をとり滞りなく事業が進むようにし、併せて来年の日マ国交樹立七十周年等を見据えた意見交換を行いました。 以下、それぞれの訪問の様子をお伝えいたします。

アペン国立公園内の活動視察

二〇二六年六月二十三日(火)、アペン国立公園を訪れて「日本NGO連携無償資金協力」事業で建設した小規模ダム及び同地域植林場所の視察、そして同事業で使用した重機を用いた「オランウータンの森再生プロジェクト」の今後の植林予定地へ至る林道整備状況の視察を行いました。 この「日本NGO連携無償資金協力」事業による「サラワク州先住民居住地域における村落給水システム整備による生活改善と関連機関のネットワーク構築事業」は六年目になり、過去五年間はサバル地域で実施して主にイバン族が居住する村々や学校へ水供給を行いました。そして当年度においてはアペン国立公園内の水源地で小規模ダムを建設して、「オランウータンの森再生プロジェクト」で学生とバディを組むトンニボン村のビダユ族たちを中心にアペン地域の小学校等への水供給を実施します。

そして、当該アペン国立公園内の水源に小規模ダムを建設するため、サラワク州政府認可のもと一時的に重機が入る道を開発する必要があり、その場所を復元するための植林を二〇二六年夏に派遣される「オランウータンの森再生プロジェクト」第一一陣・第一二陣の学生たちに行ってもらいます。本協会が雇用して熱帯雨林再生の現場で働いてくれている先住民の村人たちへの水供給事業、そして学生たちにとってはバディを組むビダユ族の村人たちへの水供給がなされる現場、単に植林するだけではない周辺事情も含めて「なぜ植林するのか」を考えて貰うための視察となりました。

その後、来年以降「オランウータンの森再生プロジェクト」で植林予定の地域で林道整備を行うのでその状況を視察しました。今回整備した地域の一部はかつて植林活動をしたことがあるため旧林道が残っており、雑草が生い茂り部分的な陥没なども生じている旧林道を重機を用いて整備を行いました。実際に旧林道を整備して新たな植林候補地への林道とする現場を視察したのは初めてだったので、熱帯雨林再生の要である林道を整備する様子を自分の目で見ることができてよかったです。

林道整備や新しい植林候補地に関しては、サラワク州政府から提供されたアペン国立公園の地図に格子状のグリッドを付けて、縦と横のセルでどの地域を整備してどの地域を植林候補地とするかなど視覚的に把握できるやり方で実施しています。この点は林業的に地理情報システム(GIS:Geographic Information System)などを活用していったらどうかという声もあろうかと思いますが、事業地は他国であるマレーシアの国立公園なので、今後の課題として今できることで視覚的な管理と把握を進めていこうと思っています。

なお、重機を入れての林道整備に進展があったので二〇二六年六月二十六日(金)に再度アペン国立公園を訪れて林道整備状況の確認をしました。私が二〇二六年二月に未整備時点の当該現場を先住民の村人と歩いて視察した際は、私の背丈以上の雑草等が広大な面積に所狭しと生い茂っており、歩くのも一苦労で人力で整備することに厳しさを感じていました。今回、他事業の重機を活用して林道整備を行うことが出来たことは今後のアペン国立公園における熱帯雨林再生事業において大きなことだと思っています。

山九の森」植林活動地と新規サバル苗木センター

二〇二六年六月二十四日(水)、サラワク州スリアン地区のサバル保護林で実施する「山九の森」の活動地を視察しました。「山九の森」は、山九株式会社のご協力により本年一月から開始した熱帯雨林再生プロジェクトで、十年間にわたり同保護林等の区画で植林とメンテナンスを行うものです。また、「山九の森」では種の収集や育苗が困難な在来種を中心に苗木を育苗する新規苗木センターの管理運営にもご支援をいただいており、サラワク州政府森林公社のアペン・サバル地域事務所に隣接する新規苗木センターの育苗状況等の視察も行いました。 訪問時はちょうど千本の植林準備が進んでいるところで、本協会の酒井和枝在サラワク州現地コーディネーターが、作業を担うイバン族の村人たちと今後千本を植えていく計画を説明しました。村人に活動地まで案内してもらい、以前視察したときより下草刈りが進められて植林場所へ目印の杭が打たれている様子を確認しました。

同日には、在来種の苗木を中心に育苗するサバルの新規苗木センターも視察しました。本年二月に採取した稚樹の育苗が続けられており、この日は新たに入手したサラワク州の州木である鉄木(ブリアン)の種約二五〇個のポッティング作業が行われていました。在来種の苗木を安定して供給できる体制を整えるには相応の年月がかかりますが、こうした地道な作業を重ねて「山九の森」の苗木をこの新規苗木センターから安定供給することを目指しています。

新規苗木センターに隣接するサラワク森林公社の事務所では、アペン及びサバル地域を担当しているマネージャーの方々へ挨拶ができ、本協会が同地域で実施している日本NGO連携無償資金協力事業や、日本財団ボランティアセンターとの協働事業についても丁寧に説明して改めての理解を得る機会にもなりました。アペン国立公園で実施する「オランウータンの森再生プロジェクト」では、サラワク州の国立公園を管轄する州政府機関であるサラワク森林公社の担当者に出席していただくことにしています。

サバル苗木センターに隣接するサラワク森林公社の事務所にて。右がアペン及びサバル地域をご担当されるマネージャー。

サラワク森林局への訪問

翌二十五日(木)は、州都クチンにあるサラワク州の保護林や森林全般を管轄し法令に基づく許認可の権限を持つ行政機関であるサラワク森林局を表敬訪問しました。本協会は二〇一九年にサラワク州政府と植林活動に関する協力協定(MOU)を締結し、二〇二二年に更新をして来年二〇二七年が再更新の時期となります。今回は、植林事業を所管する森林部の部長へ挨拶に伺いました。

 表敬訪問では、来年に控える協力協定(MOU)の更新に向けた進め方について確認をいたしました。更新の調印式典を日本とマレーシアのいずれで行うかといった話題も出て、和やかな雰囲気の中にも、双方が今後の協力関係を大切に考えていることが伝わってくる時間でした。

 このほか、本協会の熱帯雨林再生事業はじまりの地であるバライリンギン保護林において、在来種のエンカバン・ジャントンの種を採取する採種地である旨を登録し、その旨を示す看板についてサラワク森林局の標準様式で作成が進められていることを確認しました。そして、本協会がバライリンギン保護林の植林区画で新たな活動を実施して看板等を設置することも可能であることを担当部署の責任者に確認して貰いました。

サラワク州森林局にて。植林事業を所管される部署の皆様と(真ん中が森林部の部長)

セメンゴ野生動物センターへの訪問

同じく二十五日(木)には、クチン近郊のセメンゴ野生動物センターも訪問しました。同センターは、保護されたオランウータンを半野生の状態で保護・観察する施設で、本協会が日本財団ボランティアセンターと協働して実施する「オランウータンの森再生プロジェクト」でも、参加する学生たちがプログラム序盤で必ず訪れる場所です。

 この度、同センターの園長が交代されたことに伴い、新旧の園長にお会いし、これまでの活動を引き続きご協力いただけるようご挨拶と引継ぎを行いました。

セメンゴ野生動物センターにて。中央が新たにご就任された園長。

サラワク森林公社への訪問

続いて同日、セメンゴ野生動物センターと同区域にあるサラワク森林公社のクチンオフィスを訪問しました。同オフィスはアペン地域やサバル地域を含む州都クチンを管轄する場所であり、この度はそれらを統括されるクチンエリア統括マネージャーに表敬訪問しました。

 本協会がアペン国立公園で進めている事業について改めて説明し、地域の方々と協働して事業を進める際に行政機関として必要となる手続きについても丁寧に教えていただきました。私からも、日頃より日本国外務省等とやり取りをしている立場として、事務方の手続きを丁寧に進めることの重要性は十分に承知している旨をお伝えいたしました。  また、本協会とサラワク森林公社との間で締結している覚書についても、二〇三〇年の更新の際には現在の活動内容と今後の計画を踏まえて必要事項を適切に反映していきたいと言葉を貰いました。加えて、次回の訪問時にはサラワク森林公社の長官へ表敬訪問をしてはどうかとのご提案をいただき、日程の調整を進めることとなりました。

サラワク森林公社にて。中央がクチン近郊を統括されるエリアマネージャー。

クアラルンプールへ 紀伊國屋書店ダマンサラハイツ店

二〇二六年六月二十八日(日)、サラワク州からクアラルンプールへ移動しました。翌日以降の四方大使への表敬訪問等を控えた空き時間に、本協会高井昌史監事が代表取締役会長を務める株式会社紀伊國屋書店のマレーシア二店舗目となるダマンサラハイツ店へ伺いました。  同店はショッピングモール「パビリオン」の四階にあり、日曜日ということもあってか子ども連れのご家族が多く、近隣に現マレーシア首相であるアンワル・イブラヒム首相の出身校であるマラヤ大学があることもあってか学生と思われる若い世代の姿も目立ちました。マレーシアの人気歌手・女優とコラボレーションした動画で紹介されていた併設のカフェも満席で、賑わっている様子を見ることができました。

紀伊國屋書店ダマンサラハイツ店(クアラルンプール)にて。

在マレーシア日本国大使館の森下参事官とのお食事

翌六月二十九日(月)の夜には、在マレーシア日本国大使館の森下雅子参事官、田中良輝書記官とお食事をご一緒し、三時間ほどに渡りざっくばらんなお話や意見交換をさせていただきました。  本協会の事業の全体像については、二〇二六年六月十七日(水)の本協会定時総会及び理事会で承認された公益事業関係図を事前にお送りしていました。公益事業関係図をもとに一通りご説明し、熱帯雨林再生活動をはじめとする各事業について多くのご質問をいただきました。翌日の大使表敬に先立ち、本協会の活動を丁寧にお伝えできたことは大変有意義でした。

左が森下参事官、右が田中書記官。

四方大使への表敬訪問

そして二〇二六年六月三十日(火)の午前、在マレーシア日本国大使館において、四方敬之特命全権大使へ表敬訪問を行いました。当日は四方敬之大使をはじめ、二瓶大輔公使、森下雅子参事官、表江清美経済部長、松尾圭悟書記官、大河原咲良書記官、苦瀬康史書記官と、多くの皆様にご同席をいただきました。

 大使表敬では、来年が日マ国交樹立七十周年であり、それに関連して二〇二六年七月に日本マレーシア友好議員連盟の総会が開催される予定であったことから、日本国側がどのように連携をとって進めていくか話の中心となりました。 四方大使からは、日本とマレーシアの経済関係やサプライチェーンをめぐる課題、教育分野での連携など、幅広いお話を伺えました。四方大使とは二〇二六年四月に本協会小川理事長らとマレーシア出張をした際にもクアラルンプールでお会いしていたので、繋がりをもって意見交換することが出来ました。

在マレーシア日本国大使館にて。右が四方敬之特命全権大使。

大使公邸での昼食会

大使表敬の後は、大使公邸での昼食会にご招待をいただきました。慶應義塾大学の神保謙教授、公益財団法人日本国際問題研究所の吉田朋之所長、NIKKEI Asiaの記者の方など、多彩な顔ぶれが集まりました。

 昼食会はすべて英語で行われ、マレーシアを取り巻く近時の情勢について、それぞれのご専門やご経験を踏まえた見解が交わされました。NIKKEI Asiaの記者の方がサラワク州のご出身と伺い、思いがけないご縁を感じた昼食会でもありました。また、昼食会のお食事は大使公邸の在外公館料理人が担当されることもあり、大変美味しかったです(笑)

大使公邸での昼食会にて、ご参加の皆様と。

国家記念碑

帰国前の二〇二六年七月一日(水)、クアラルンプール市内にある国家記念碑(Tugu Negara)を訪れました。恥ずかしながらまだ国家記念碑を訪れたことがなく、本協会小川理事長より空き時間があれば是非行くようにと言って貰い訪問が叶いました。

 国家記念碑は、戦没者を追悼するために建立された記念碑で、オーストリア出身の彫刻家フェリックス・デ・ウェルドン氏により一九六三年から一九六六年にかけて制作された高さ約十五メートルあるとても大きなブロンズ像です。。第一次世界大戦、第二次世界大戦、そしてマラヤ危機で亡くなった方々への弔いが込められています。日本占領下の時代に亡くなられた方々も追悼の対象とされており、両国の歴史と、今日までの友好関係を改めて考える時間となりました。

クアラルンプールの国家記念碑(Tugu Negara)。

おわりに

今回の訪問では、来年の日マ国交樹立七十周年、日本マレーシア協会設立七十周年の節目を基軸として、サラワク州政府関係機関、そして在マレーシア日本国大使館と事業報告や情報共有をして今後の話をすることが出来ました。熱帯雨林再生の現場も丁寧に視察することができ、州政府と連携して事業を継続していくことで、両国の友好関係を一つ一つ積み重ねていきたいと思います。

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